現代の企業活動では、ビジネス戦略と連動したIT活用が大きな鍵を握ります。
戦略とITが一体となることで、新規事業やサービスモデルの拡張、顧客接点の最適化など、多彩な成果が期待できるのです。
このレッスンでは、ITがビジネス全体の戦略をどのように支え、事業に貢献していくのかを確認していきます。
企業がITを導入・活用する背景や意義を学び、高い視座を持って「ビジネス戦略とITを結びつけるプロセス」の全貌を把握しましょう。
ビジネス戦略とITを結びつけ、自社や自身の業務に具体的に応用できるようになること
はじめに、会社とは何かを取り上げ、ビジネス戦略と目標設定、代表的な経営戦略手法、会社の組織形態について見ていきましょう。
会社 とは、一定の目的を達成するために、法的なルールに基づいて設立された組織です。
通常、会社は「利益を追求するための組織」であり、事業活動を通じて商品やサービスを提供し、その収益を上げることを目的とします。会社は法律上の「法人」としての人格を持ち、契約を結んだり、資産を所有したり、責任を負ったりすることができます。
会社法 は、日本の会社形態を規定する基本的な法律です。
会社法では、会社の設立や運営方法、株主総会や取締役会のあり方、計算書類(財務諸表)の作成などについて定めています。
具体的には、設立手続きにおける定款の作成や、公証人の認証、資本金の払い込みといったプロセスが詳細に規定されています。
また、会社法は企業規模に応じて取締役や監査役の人数、取締役会・監査役会の設置義務を決めており、上場企業など大規模な会社はより厳格な規制に従う必要があります。
株式会社 は、会社の最も一般的な形態で、株式を発行して資金を集める企業形態の1つです。
株式を購入した人は「株主」となり、企業の所有者の一部となります。株式会社の主な特徴は、資本が株式として分割され、それを通じて資金調達を行なう仕組みと、株主が出資額を超える責任を負わない「有限責任」である点です。
配当 とは、企業が得た利益の一部を株主に分配するものです。
株主総会 とは、株式会社の意思決定を行なうための重要な会議です。
キャピタルゲイン とは、株式などの資産を購入価格より高い価格で売却し得られる利益を指します。
株式会社の経営陣にはさまざまな役職があり、それぞれに明確な責任範囲があります。以下に、日本企業と外国企業でよく使われる役職名とその役割について説明します。
日本企業で使われる役職名
外国企業でよく使われる役職名
一部の日本企業でも、これらの役職名を使用するケースが増えています。
企業が成長を目指すうえで、明確な「ビジョン」と「経営理念」を設定することは欠かせません。
ビジョン は、企業が将来的に実現したい姿です。長期的に追求する理想像を描きます。
社内外に対して企業の方向性を示し、社員のモチベーションを高め、ステークホルダーの支持を得る役割を果たします。
例:
経営理念(ミッション) は、現在の活動における存在意義や目的です。
企業がなぜ存在するのか、社会にどう貢献するのかという根源的な問いに対する答えです。経営理念を全社的に共有することで、日々の業務やプロジェクトの判断基準が明確になります。
例:
ビジョンやミッションを基軸に、各事業や部門ごとに具体的な数値目標を設定します。
売上や利益だけでなく、顧客満足度やシェア率、商品リリースの速度など、企業が重視する指標を段階的に洗い出します。
数値目標には、「KGI」や「KPI」があります。
設定したKPIは、定期的にモニタリングし、達成度や進捗状況を確認します。問題が見つかれば、原因を分析して改善策を立案し、実行後に再度評価します。こうしたPDCAサイクルの継続により、戦略が机上の空論に終わらず、実効性の高いものへと成熟していきます。
BSC(Balanced Scorecard: バランス・スコアカード)は、企業の目標達成状況を包括的に評価するためのフレームワークです。以下の4つの視点で評価します。
CSR(Corporate Social Responsibility: 企業の社会的責任)は、企業が経済活動を行なう中で利益追求だけにとどまらず、環境保護や社会貢献など、社会全体の持続可能性を高める責任を果たすことを指します。
企業はステークホルダー(株主、顧客、従業員、地域社会など)に対する影響を考慮し、社会との調和を図る活動を行ないます。
CSRの主な分野の例:
経営戦略には、企業が自身の立ち位置や環境を分析して、今後の方向性を決定するためのフレームワークがいくつも存在します。
それぞれのフレームワークには特徴があり、組み合わせて使用することで企業を多角的に分析できます。ここでは、経営戦略で良く使われる代表的なフレームワークと用語について整理します。
PEST分析 は、企業の外部環境を政治的(Political)、経済的(Economic)、社会的(Social)、技術的(Technological)の4つの側面から分析するフレームワークです。
PEST分析では、企業が事業を行なうえで影響を受ける可能性のある外部要因を特定し、機会とリスクを把握できます。これにより、経営戦略の立案や意思決定に役立てることができます。
ある自動車メーカーがEV(電気自動車)事業に参入することを検討しているとします。PEST分析を行なうと以下のようになるでしょう。

このように分析することで、EV事業に対する機会(規制強化、補助金、環境意識の高まりなど)とリスク(インフラ投資の遅れ、技術力の有無など)が明確になります。
自社の経営資源や競争力を踏まえたうえで、最終的にEV事業参入の是非を判断することになります。
3C分析 は、ビジネスにおける顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの要素を分析するフレームワークです。
ビジネスの成功には、顧客ニーズを正しく捉え、競合に対する優位性を確保し、自社の経営資源を有効活用することが欠かせません。3C分析はこれらの重要な要素を体系的に分析するツールとなります。
ある飲食チェーン店が新規出店を検討している場合を例に3C分析を行ないます。

たとえば、ターゲット層が家族連れで価格重視という分析結果であれば、リーズナブルな価格帯とキッズメニューの充実が必要となります。
競合が飽和しており、価格競争が避けられない場合は、味や雰囲気で差別化を図る必要があります。
自社で人材や資金が不足しているのであれば、フランチャイズ方式を検討するなどの対策が考えられます。
5Forces分析 は、マイケル・E・ポーターが提唱した業界の競争状況を分析するためのフレームワークです。
この分析では、新規参入の脅威、代替品の脅威、買い手の交渉力、売り手の交渉力、業界内の競争の5つの力を評価します。これにより、その業界の魅力度や競争の激しさを把握できます。
あるスマートフォンメーカーがスマートウォッチ事業に参入することを検討しているとします。5Forces分析を行なうと以下のようになります。

このように分析を行なうことで、スマートウォッチ業界への新規参入の障壁が高く、競争が激しいこともわかります。一方で、ウェアラブル市場の成長が見込まれるため、参入のチャンスもありそうです。
あわせて経営戦略用語についても確認しておきましょう。
企業が戦略を実行するには、組織構造が適切に整っている必要があります。代表的な組織形態として、以下の例が挙げられます。
営業、開発、経理など、業務機能ごとに部門を分ける最もオーソドックスな形式です。専門性が深まりやすい反面、部門間の壁ができやすいという課題があります。
製品や地域、顧客セグメントなどで事業部を分割する形式です。各事業部が損益責任を負うケースが多く、迅速な意思決定が可能です。ただし、重複投資や部門間競争の激化などに注意が必要です。
職能軸と製品軸など、2つ以上の軸で組織を編成する形態です。複数の上司を持つケースがあるため、役割分担や責任範囲を明確にしないと混乱が生じやすい半面、柔軟で広範な視点が得られます。
マーケティング は、企業が提供する製品やサービスの価値を顧客に伝え、市場での存在感を高めるための活動全般を指します。
企業にとってマーケティングが果たす役割は、単に宣伝活動や販促だけにとどまりません。市場のニーズと技術的な可能性を結びつけることで、新しい事業機会やサービスモデルを生み出すきっかけにもなります。
ここでは、マーケティングの基本とデジタルマーケティング、データ分析について説明します。
マーケティングを体系的にとらえるために、4Pや4Cなどの基本フレームワークがしばしば利用されます。
| 観点 | 4P | 4C |
|---|---|---|
| 価値 | Product(製品) | Customer Value(顧客価値) |
| 価格 | Price(価格) | Cost(顧客コスト) |
| 流通 | Place(流通) | Convenience(利便性) |
| 宣伝 | Promotion(プロモーション) | Communication(コミュニケーション) |
4P は企業目線での販売戦略を構成する要素に着目しています。
製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、宣伝(Promotion)を組み合わせ、ターゲットとする顧客セグメントに適切にアプローチします。
4C は顧客目線を重視し、顧客価値(Customer Value)や顧客コスト(Cost)といった観点から戦略を立案します。
消費者が望む価値を満たすと同時に、購入までの手間や価格を最適化し、コミュニケーションの仕組みを整えることが大切です。
RFM分析 は、以下の3つの指標を用いて顧客を分類し、それぞれに合った施策を行なうための分析です。顧客一人ひとりを深く理解するための手法として知られています。
RFM分析により、リピート率の高い顧客や休眠状態の顧客などを見分け、特定のグループに狙いを定めたプロモーションを展開できます。
顧客の多様なニーズを理解するには、市場の全体像を把握する 市場調査 が欠かせません。アンケートやインタビュー、Web上のアクセスログなど、あらゆるデータから顧客の年齢や地域、購買行動などを分析します。
市場調査の結果をもとに、セグメンテーション(市場の細分化)を行ないます。たとえば、「若年層でSNS利用が多い層」「高所得者向け高級路線」など、複数の観点を掛け合わせてグルーピングすることで、より的確にニーズをとらえることができます。
近年では、SNSや検索エンジン、オンライン広告など、デジタル技術を駆使したマーケティングが多くの企業で当たり前になりました。
SNSマーケティング は、X(旧Twitter)やInstagram、LinkedInなどのプラットフォームを活用して、ブランド認知度の向上や顧客との直接的なコミュニケーションを行なう手法です。
SEO(Search Engine Optimization)は、ユーザーが検索エンジンを使って商品やサービスを探す際に、自社のWebサイトを上位に表示させる取り組みです。
検索エンジンのアルゴリズムは日々進化しており、関連キーワードの選定やコンテンツの質、リンクの張り方など、多方面から対策を行なう必要があります。大規模なECサイトやメディアでは、SEO専門チームを編成して継続的にサイト改善を進めることも珍しくありません。
デジタルマーケティングでは、以下のような広告を活用してブランド認知度向上や販売促進を狙います。
ITによってもたらされるビッグデータやリアルタイム解析の仕組みを使えば、企業は今までにないレベルで市場や顧客行動を把握できます。
顧客の行動履歴や嗜好情報を分析して施策を打つことで、企業はより効率的に売上やブランド力を伸ばすチャンスを得られるようになっています。
企業が継続的に成長していくには、経営資源を効率よく管理し、組織全体の動きを可視化することが重要です。
経営管理システム は、財務、在庫、顧客データなど、あらゆる情報を集約・分析することで経営判断を支援します。
競争の激しい市場で生き残るためには、これらのシステムの導入・活用を適切に行ない、常に最新の情報を踏まえて意思決定を行なうことが求められます。
経営管理システムには、「ERP」や「SCM」、「CRM」などがあります。
ERP は、会計や人事、購買、販売管理など、企業活動の基幹領域を一元的に管理するシステムです。
部門ごとに別々の基幹システムを導入していると、データが分断されて整合性を保ちにくくなる問題があります。
ERPを導入すると、1つのシステムに統合されたデータを使って、各部署が共通の情報を参照できます。
SCM は、製品が原材料の調達から最終的な顧客の手に渡るまでのプロセスを管理する仕組みです。
調達コストの削減や在庫最適化を図るうえで、サプライチェーン全体の状況を可視化する必要があります。
CRM は、顧客との関係性を管理・強化するためのシステムです。顧客の購買履歴や問い合わせ内容を集約し、適切なアプローチやサポートを提供しやすくします。
経営管理システムと、各業務システムとの連携についても確認しましょう。
製造業や小売業においては、生産から販売、在庫の動きを総合的に管理することが不可欠です。これらのシステムは、以下のような機能をもっています。
これらの業務システムを個別に運用していると、データの整合性がとりにくくなります。そこで、基幹システムや他部門のシステムと連携させることが重要です。生産量や在庫数のデータがリアルタイムに更新され、販売予定と照らしあわせて自動的に生産計画を調整できるようになります。
各業務システムを連携させると、重複入力やヒューマンエラーの削減につながります。さらに、横断的にデータを分析することで、新たなビジネス機会や改善施策を発見しやすくなります。
経営管理システムを導入すると、部門間でバラバラだったデータを統合し、組織全体で一貫性のある情報共有が可能になります。
経営レベルでは、投資判断や新規事業立案に使うデータを迅速に得られる利点があります。
導入前からリスク対策を検討することが大切です。
経営管理システムは企業の生命線となる重要な仕組みです。導入や運用段階で正しい設計・管理を行ない、経営目標に沿った情報活用を継続することで、大きな経営効果を得ることができます。
企業が継続的に成長するためには、収益や資金繰りを安定させることが欠かせません。そこで重要になるのが、会計と財務の知識を正しく身につけることです。
ここでは、会計や財務の基礎について説明します。
会計 は、企業の経営活動を記録・整理し、その結果を利害関係者に報告する仕組みです。
取引の内容を適切に集計し、売上や費用、利益などの指標を明らかにすることで、経営者や投資家、取引先などが企業の状況を客観的に把握できます。
会計には大きく分けて 財務会計 と 管理会計 が存在します。
良く使われる会計用語や指標について確認しましょう。
損益分岐点 は、利益がちょうどゼロになる売上高のことです。固定費と変動費に分けて考えると把握しやすくなります。
計算式は以下の通りです。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ (1 - 変動費率)
たとえば、固定費が 300万円、売上のうち変動費が 60%(変動費率 0.6)だとすると、
損益分岐点売上高 = 300万円 ÷ (1 - 0.6) = 300万円 ÷ 0.4 = 750万円
よって、売上が 750万円 に達してはじめて利益がゼロラインになります。
会計指標には、企業の安全性や収益性を評価するうえで役立つものが多数あります。
自己資本比率(%) = (自己資本 ÷ 総資本) × 100
数値が高いほど財務基盤が安定しているといえます。
総資本回転率 = 売上高 ÷ 総資本
ROE(%) = (当期純利益 ÷ 自己資本) × 100
財務諸表(ざいむしょひょう)は、企業や組織の財務状況や経営成績を示すための公式な報告書で、主に以下の3つの主要な書類で構成されています。
貸借対照表(Balance Sheet) は、ある時点での企業の資産や負債、資本を整理した表です。企業の安定性をチェックするうえで基礎となります。
貸借対照表(B/S)の例(単位:千円):
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金および預金 | 10,000 | 短期借入金 | 8,000 |
| 売掛金 | 5,000 | 買掛金 | 6,000 |
| 商品 | 4,000 | 社債 | 2,000 |
| 建物 | 20,000 | 資本金 | 15,000 |
| 設備 | 6,000 | 利益剰余金 | 14,000 |
| 資産合計 | 45,000 | 負債・純資産合計 | 45,000 |
損益計算書(Profit and Loss Statement) は、一定期間における収益と費用の状況を示す表です。企業がどの程度の利益を出したかを把握でき、経営成績を評価するために用いられます。
損益計算書(P/L)の例(単位:千円):
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売上高 | 50,000 |
| 売上原価 | 30,000 |
| 売上総利益 | 20,000 |
| 販売費および一般管理費 | 10,000 |
| 営業利益 | 10,000 |
| 営業外収益 | 1,000 |
| 営業外費用 | 500 |
| 経常利益 | 10,500 |
| 税引前当期純利益 | 10,500 |
| 法人税等 | 3,500 |
| 当期純利益 | 7,000 |
キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement) は、一定期間における資金の増減を示します。以下の3つの区分に分けてお金の流れを整理します。
キャッシュフロー計算書(C/F)の例(単位:千円):
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 営業活動によるキャッシュフロー | 12,000 |
| 投資活動によるキャッシュフロー | △5,000 |
| 財務活動によるキャッシュフロー | △4,000 |
| 現金および現金同等物の増減額 | 3,000 |
| 期首現金および現金同等物残高 | 7,000 |
| 期末現金および現金同等物残高 | 10,000 |
現在では、会計や財務の処理は、パソコンを使って行なうことが一般的です。
企業の規模に応じて導入できる会計ソフトは多種多様です。取引データの入力を行なうと、仕訳帳や総勘定元帳、試算表などの帳票を自動生成する仕組みが一般的です。
ITを活用すると、企業の数値をリアルタイムに把握し、迅速に施策を打てるようになります。BIツールと組み合わせれば、部門別の収益分析や期間比較など、経営に役立つダッシュボードを用意できます。
企業がITを活用するうえでは、技術的な優位性だけでなく、組織全体でITを適切に管理し、社会的な規格やルールを遵守することが欠かせません。
ITガバナンス は、経営方針を踏まえながらIT資源を管理し、リスクをコントロールするための枠組みです。
一方で、世界各国や産業界ではさまざまな 標準化 が進んでおり、これらの規格に則ることで安全性や互換性の確保、業務の効率化が実現しやすくなります。
以下では、ITガバナンスと標準化、それに関連する監査や内部統制について説明します。
ITガバナンス とは、企業がIT投資やIT運用を含む情報システム関連の活動を戦略的に管理・統制する仕組みです。システム障害や情報漏えいのリスクを最小限に抑えつつ、ITの効果を最大限に引き出すことを目的としています。
ITガバナンスを実践するためのフレームワークに、COBIT(Control Objectives for Information and Related Technology)などがあります。
システムの導入だけでなく、運用フェーズの管理体制が整っていないと、サービス停止やセキュリティ事故のリスクが高まります。
標準化の、主要な国際/国内標準には以下のようなものがあります。
ITやビジネスにおいては、国際標準化機構(ISO)や国際電気標準会議(IEC)で定めた規格が広く採用されています。国内では日本工業規格(JIS)も重要な存在です。
流通や小売の現場では、商品コードやバーコードの標準化が欠かせません。
システム監査 は、情報システムが適切に運用されているか、リスク管理や統制が機能しているかを客観的に検証する活動です。監査結果は、経営層がシステムの改善点を把握し、対策を講じるための重要な判断材料となります。
監査は主に以下のプロセスを踏んで進められます。
企業が適切な財務報告を行ない、業務を効率化するためには、内部統制 の仕組みを整える必要があります。内部統制とは、組織の目標達成に向けたリスクを管理し、不正や誤りが起きにくい環境を構築するための全般的な取り組みです。
企業がビジネスを展開するうえでは、法律や規制、社会的ルールを守り、利害関係者の信頼を得ることが欠かせません。
とりわけ、情報技術を活用する現場では、知的財産権やセキュリティ関連法規、労働法規など、多岐にわたる法令の理解が必要です。
社会からの信頼を支え、持続的な成長を実現するためにも、各種ガイドラインや企業倫理の重要性を認識し、徹底したコンプライアンス体制を築くことが求められます。
著作権 は、文学や音楽、プログラムコードなどの著作物を保護する権利です。著作者に無断で複製や改変、配布を行なうと侵害にあたります。
産業財産権 は、発明やデザイン、ブランド名などに対して与えられる権利群です。企業が技術的優位性を確保し、市場の競争力を高めるために活用されます。
サイバーセキュリティ基本法 は、国レベルでサイバー攻撃への対策を促進するための枠組みを定めた法律です。公共機関や事業者に対して、情報セキュリティの強化や情報共有の推進を求めています。
不正アクセス禁止法 は、他人のIDやパスワードを無断で利用してシステムに侵入する行為などを禁止する法律です。
IT業務では、プロジェクト単位で外部人材を活用するケースが多いです。それぞれの契約形態について、主な特徴と指示系統の違いを整理しておきましょう。
| 契約形態 | 雇用契約 | 労働者派遣契約 | 請負契約 | 準委任契約・SES |
|---|---|---|---|---|
| 法的根拠 | 労働基準法 | 労働者派遣法 | 民法(請負) | 民法(準委任) |
| 目的・責任 | 企業が労働者を直接雇用し、労働を提供 | 派遣元の労働者が派遣先にて労働を提供 | 仕事の完成(成果物)に対して完成責任を負う | 業務遂行が目的(成果物に対する責任は軽い) |
| 指示系統 | 企業(使用者)が直接的かつ具体的に指示 | 派遣先企業が直接業務指示を行ない、雇用は派遣元 | 発注者は成果物に対するチェック・検収が中心 | 発注者の求める範囲で業務を行なう(柔軟に指示を受けるが、雇用ほど強くはない) |
| 使用従属関係 | 企業と労働者の間に成立 | 派遣先で実質的に従属関係が生じる(雇用関係は派遣元) | 独立性が高く、請負人が自己の裁量で業務を遂行 | 雇用や派遣ほどの従属関係ではなく、独立事業者として技術サービス提供(SESなど) |
善管注意義務
善管注意義務(ぜんかんちゅういぎむ)とは、「通常の事業者・専門家として求められる注意をもって業務を遂行しなければならない」というものです。準委任契約の受任者には「善管注意義務」があります。たとえば、ITエンジニアであれば、プログラミングやシステム設計に関して一般的に求められる専門知識・経験を踏まえた水準で作業を行なうことが要求されます。
市販されているソフトウェアには、使用範囲や台数などを定めたライセンス契約が付随します。
オープンソースソフトウェア(OSS) はソースコードが公開され、誰でも改変・再配布できるものが多いですが、その利用には独自のライセンス条項が存在します。
企業や組織が個人情報を取り扱う際には、個人情報保護法 に基づき安全管理措置を講じる必要があります。
市場支配的な立場を悪用した不当な取引や価格設定は、独占禁止法 に抵触する恐れがあります。IT業界ではプラットフォーム事業者などが持つ影響力が大きいため、公正取引委員会ガイドラインによる監視が強化されています。
コンプライアンスは法令を守ることだけでなく、社会規範や道徳観にもとづく行動を含みます。企業が持続的に発展するには、企業倫理 を確立し、組織全体で共有することが欠かせません。
このレッスンでは、企業活動におけるビジネス戦略とITの関連性を中心に、会社の基本的な仕組みや経営戦略フレームワーク、マーケティングと事業価値創出、経営管理システムの活用、会計・財務の基礎、ITガバナンスと標準化、各種法務・ガイドラインと企業倫理といった幅広いトピックを解説しました。
ビジネスパーソンがこれらの要点を理解していれば、経営層やエンジニア、現場担当者など社内外のステークホルダーとの共通言語を確立でき、ITリソースを戦略的に活用した意思決定が行ないやすくなります。
ぜひ、本レッスンで学んだ基礎知識や活用方法を踏まえて、自社や自身の業務においてITを最大限に活かし、継続的な価値創出と競争力強化を目指してください。
このレッスンで学んだことを振り返り、理解度を確認しましょう。
下記の5つの質問に答えてください。「回答フォーマット」をコピーして、コメント欄に記入して提出してください。
回答フォーマット
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このコースを通じて学んだITの基礎知識や考え方は、ビジネスパーソンにとって大きな武器となります。企業や社会がデジタルを軸に変革を遂げるいま、ITを理解し使いこなす力は、自分の仕事をより効率的に進めるだけでなく、新たな価値創造にも直結します。
技術は日進月歩ですが、その根底を支える基本的な概念や問題解決へのアプローチは、どんな時代でも通用するものです。本コースで身につけた知識を足がかりに、さらに新しいテクノロジーやアイデアを学び、皆さんの事業や仕事の場で活かしていただければ幸いです。
ときには変化を前に不安に感じることもあるでしょう。しかし、ITを理解していると、挑戦や工夫がむしろワクワクする機会へと変わります。皆さんにはぜひ、学んだことを活かして「もっとできることはないか」「新しい手段を見つけられないか」という視点を持ち続けてください。
本コースが、これからのキャリアやビジネスでITを最大限に活用し、前進するための一歩となることを願っています。勇気と好奇心を持って、変化の波を楽しみながら、これからも学びと挑戦を続けてください。