Lesson8

これからのテクノロジー

Lesson 8Chapter 1
学習の目標

このレッスンでは、AIやビッグデータ、IoTや5G、マルチメディアなど、幅広いテクノロジーについて取り上げます。

私たちの生活やビジネスでは、これらの先端技術が多くのサービスやシステムを支えています。たとえば、日常的に利用している検索エンジンやSNSの高度なレコメンドはAIを活用しており、スマートフォンでクラウドサービスを利用しているときも、ネットワークの進化やエッジコンピューティングなどが見えないところで働いています。

組織内のリソースや知見にとどまらず、外部の企業や研究機関、コミュニティとの連携によって新しい価値を創造する概念を オープンイノベーション といいます。AIやIoTなど、多彩なテクノロジーを活用するうえで、自社だけでなく他社・他分野との協業を推進し、新たなサービスやビジネスモデルを生み出すことが重要になっています。

ここでは、それぞれの技術の基本となる概念や活用事例、課題や展望を整理します。どのようなポイントがビジネスに役立ち、どこに新たなチャンスが潜んでいるのか、全体像をつかみましょう。

本レッスンの主な内容

  • AIの概要と応用
  • ビッグデータ
  • IoT
  • 5Gと通信技術の進化
  • クラウドとエッジコンピューティング
  • ブロックチェーンと分散型技術
  • 量子コンピューティング
  • マルチメディアとAR、VR

本レッスンのゴール

テクノロジーがどのように社会やビジネスを支え、今後の可能性を広げるのかを理解すること

本レッスンの前提条件

  • ビジネスパーソンに必要なITスキルを把握していること(レッスン1)
  • コンピュータの中身について正しいイメージを持っていること(レッスン2)
  • ネットワークとインターネットの基本的な仕組み、関連技術、およびそれらがどのようにつながり合っているかを正しく理解していること(レッスン3)
  • 情報資産を守るための情報セキュリティの基本概念と3要素、リスク評価、脅威・対策技術、法規制を正しく理解していること(レッスン4)
  • アルゴリズムとプログラミングの基礎、システムとプログラムの関係を正しく理解していること(レッスン5)
  • データベースの基礎や設計・運用の考え方、SQLの基本を理解し、ビジネスでのデータ活用をイメージできること(レッスン6)
  • クラウドの特徴や利点、リスク、運用方法を理解し、ビジネスにおけるクラウド活用をイメージできること(レッスン7)

Lesson 8Chapter 2
AI

AI とは人工知能(Artificial Intelligence)の略称であり、コンピューターにより人間の知能を模倣したシステムのことをいいます。

最近ではChatGPT(AIチャットボット)が質問に答えたり、ルンバ(ロボット掃除機)が部屋の隅々まで掃除をしてくれたりします。これらは、身近なAI技術ということができます。また、囲碁や将棋の分野では、AIの性能はすでに人間のプロを上回っています。これから先、技術が進むにつれ、これまで不可能とされていたようなこともすべてAIが解決してくれる、そんな時代が来るという期待も見られるようになっています。

Society 5.0

Society 5.0 は、日本政府が提唱する、サイバー空間(AI・IoT・ビッグデータなど)とフィジカル空間(現実社会)を高度に融合させた未来社会のビジョンです。狩猟社会(1.0)・農耕社会(2.0)・工業社会(3.0)・情報社会(4.0)に続く新たな社会とされ、少子高齢化やエネルギー問題など、さまざまな社会課題をデジタル技術で解決することが期待されています。

内閣府 - Society 5.0

Lesson 8Chapter 2.1
AIの用語

はじめに、一般的なAI関連の用語と使い方について整理しましょう。

AI

AI(Artificial Intelligence、人工知能)は、非常に広い概念で、自動的に問題解決やタスクの実行、決定などを行なうシステムを指します。

AIは人間の知的活動をコンピューターで模倣する技術の総称であり、ロボット制御、言語処理、画像認識などさまざまな領域が含まれます。AIはルールベースのシステムから、学習して自己改善するシステムまで、幅広い技術を含んでいます。

用語の使い方:

  • 将棋ソフトにはAIが搭載されている
  • 「お洗濯AI」搭載により洗剤投入から乾燥まですべておまかせ
  • 働き方改革の実現にはAIの利活用が必須だ

機械学習

機械学習はAIの中心的な技術の1つで、コンピューターがデータをもとに「学習」し、それをもとに予測や識別などの「特定のタスク」を自動で行なうシステム(アルゴリズム)です。

機械学習により、プログラムは明示的なプログラミングなしにデータからパターンを学習し、新しいデータに対して判断や予測を行なうことができます。たとえば、スパムメールのフィルタリング、顧客の購買行動の予測などがあります。機械学習のシステムを構築するプロセスで作成されるものを「機械学習モデル」と呼びます。

用語の使い方:

  • 機械学習を使い顧客の購買履歴データから次に購入する商品を予測した
  • 新しい機械学習モデルを試し、予測の精度が10%向上した
  • 車の自動運転には物体を検知する機械学習のモデルが使われている

ディープラーニング

ディープラーニングは機械学習の一種で、人間の脳の働きを模倣した「ニューラルネットワーク」をもとにした手法です。

特に、多層(深層、ディープ)のニューラルネットワークを使用することが特徴で、これにより複雑なタスクの解決が可能になります。ディープラーニングは、画像認識、自然言語処理、音声認識などの分野で特に有効であり、生成AI(GPTシリーズなどのテキスト生成、画像生成など)もディープラーニングの応用例の1つです。

用語の使い方:

  • ディープラーニングにより画像認識の精度が飛躍的に向上した
  • ChatGPTにはGPT-4というディープラーニングのモデルが採用されている
  • 現在のAIブームの火付け役はディープラーニングだ

Lesson 8Chapter 2.2
AIの種類

AI(機械学習)には、以下の種類があります。

種類 できること 学習の種類 活用例
予測系AI 金額などの数値を予測する 教師あり(回帰) 売上予測、需要予測、顧客行動予測
識別系AI 種類を分類する 教師あり(分類)
教師なし
不良品判定、人物認識、異常検知
実行系AI 自動運転など 強化学習 自動運転、ドローン制御、将棋AI
生成系AI 自然言語で会話する、
絵を書く、作曲する
自己教師学習 文章生成、翻訳、要約、画像生成、音声認識

AIの進化は、シンプルな予測系や識別系始まり、環境に対する適応的な実行系を経て、現在は新しいデータやコンテンツを創造する生成系に至っています。

ここでは、現在のAI活用の主流となっている「生成AI」について、詳しく説明します。

Lesson 8Chapter 2.3
生成AI

生成AI(Generative AI)は、新しいデータやコンテンツを生成する能力を持つディープラーニングのモデルです。

生成AIは、画像、音楽、テキスト、ビデオなど多岐にわたるコンテンツを生成することができ、クリエイティブな領域や、データ分析、予測モデリングなどの分野で幅広く利用されています。

ここでは、生成AIの一種である 言語モデル について説明します。言語モデルは文章を生成する生成AIです。

言語モデルとは

言語モデル とは、私たち人間が言葉を使う際のルールやパターンをテキストデータから学習し、それに基づいて文章を生成するプログラムです。現代の言語モデルは大規模なものが主流のため、LLM(Large Language Model、大規模言語モデル)とも表記されます。

言語モデルはインターネットなどから収集した大量のテキストデータ(ウェブページ、書籍、記事など)を使用して学習を行なっています。その知識をもとに、もっともらしい単語を 確率で選んで 文章を生成しています。

たとえば オンラインスクールとは、 という文章を与えたとしましょう。

言語モデルは、以下のように文章を逐次的に生成します。

  1. オンラインスクールとは、 に続く単語として プログラミング を選びます。
  2. オンラインスクールとは、プログラミング に続く単語として を選びます。
  3. オンラインスクールとは、プログラミングや に続く単語として Web を選びます。
  4. オンラインスクールとは、プログラミングやWeb に続く単語として デザイン を選びます。

このように、言語モデルは文章に続く単語を 確率的 に選んでいるだけです。実際には、処理している 文章の意味を理解しておらず、意志や心も持っていません

プロンプトとは

プロンプト とは、人間が言語モデルに与える文章のことです。プロンプトを使って、言語モデルはどのように答えるかを決定します。

たとえば言語モデルに以下のプロンプトを入力したとします。

言語モデルとは何か、説明してください。

言語モデルからの出力は以下のようになります。確率的に文章を生成しているので、毎回結果は異なります。

出力結果の例:

言語モデルは、自然言語処理(NLP)やコンピュータープログラミングにおいて、言語の理解と生成を行うための数学的なモデルです。言語モデルは、テキストデータを解釈し、予測し、生成するために使用されます。主な用途は以下の通りです。

文章生成: 言語モデルは、与えられたテキストから新しい文章を生成するために使用されます。これは文章要約、文章の自動化、クリエイティブな文章生成などに役立ちます。

機械翻訳: 言語モデルは、異なる言語間でテキストを自動的に翻訳するための機械翻訳システムに組み込まれます。これにより、異なる言語間でコミュニケーションを容易にすることができます。

質問応答: 言語モデルは、ユーザーが質問を投げかけたときに適切な答えを生成するために使用されます。これは仕事効率化や情報アクセスの向上に役立ちます。

文章分類: 言語モデルは、テキストデータを分類するタスクで使用され、感情分析、スパム検出、トピック分類などに応用されます。
...(略)

この時、言語モデルは「テキストデータから学習した膨大な知識」全体から「言語モデルについて説明している知識」を使うようなイメージで回答を生成しています。

言語モデルの活用事例

言語モデルは汎用性が高く、ビジネスのさまざまな目的で活用できます。

活用例 説明
文章生成 箇条書きの要件から形式的なメール文章を生成
情報整理 乱雑なメモを表にまとめる
校正/推敲 誤字、脱字、よりよい表現に修正
要約 長い文章を短く要約
議論 テーマを与えて言語モデル同士で議論
プログラミング コメントからソースコードを生成
翻訳 日本語↔英語などの翻訳
学習 テーマから問題を作成
アイデア生成 プロンプトから派生するアイデアを提供
市場調査 インターネット上のデータを集約/集計
感情分析 アンケートの文章から顧客満足度を測定

各社の言語モデルサービス

言語モデルを利用できるサービスは各社から提供されています。無料で利用できる主なサービスを例示します。

Lesson 8Chapter 2.4
活用事例

AIの活用事例は多岐にわたります。以下の分野が特に注目されています。

  • 自然言語処理
    • チャットボットや音声アシスタント、文章の自動要約など、文字や音声データを扱う技術です。
    • コールセンターの対応をAIが自動化するケースも増えています。複雑な問い合わせや苦情対応など、人間の判断が求められる箇所もありますが、多くの定型的なやりとりはAIが処理しています。
  • 画像認識・映像解析
    • セキュリティカメラの映像から異常行動を検出するシステム、医療の画像診断サポート、製造業の不良検品などで役立ちます。
    • 医療の現場では、CTやMRIなどの検査画像をAIが自動解析することで、早期発見や診断精度の向上が期待されています。
  • 需要予測・レコメンド
    • 小売業やECサイトでは、過去の販売実績や顧客属性、季節要因などを取り込み、AIが自動で需要を予測します。
    • レコメンド機能も需要予測の延長線で活用されています。ユーザーの閲覧履歴や購入履歴から、興味がありそうな商品やコンテンツを表示することで、販売機会を高めます。
  • 経営戦略のサポート
    • 膨大な業務データをAIが分析することで、コスト削減や最適なリソース配分、人事配置の最適化などを検討する材料が得られます。
    • BIツールや可視化ソフトウェアと連携し、ダッシュボード上でリアルタイムに経営指標をトラッキングできる仕組みも一般的になりつつあります。

Lesson 8Chapter 2.5
AIと倫理

AIの進歩に伴い、以下の倫理的課題やリスクが注目されています。

  • プライバシー保護
    AIが学習するためには多くのデータが必要になります。そこには個人情報を含むケースが多いです。適切な匿名化や取り扱いのルールを整備しないと、個人のプライバシーを侵害する恐れがあります。
  • 公平性・バイアス
    機械学習のモデルは、学習データの偏りをそのまま反映する可能性があります。たとえば、採用支援システムが特定の性別や人種を過小評価するなどの問題が報告されています。こうしたバイアスは、データセットの構築段階から注意して取り除くことが大切です。
  • 責任の所在
    AIが決定を下す場面が増えると、その結果に対する責任はどこにあるのかという問題が出てきます。特に医療や自動運転、金融取引など、人命や資産に直接影響を与える場面では、安全策と責任の明確化が必須です。
  • 雇用への影響
    単純作業の自動化が進む一方で、新たな職種やスキルの需要が生まれることもあります。社会がAIを受け入れ、労働者が適切なスキルアップや配置転換を図る体制を整えることが課題です。

AI活用は大きなメリットをもたらしますが、課題を放置すると企業や個人にとって大きなリスクになり得ます。十分な理解をもって、技術的・社会的な取り組みを進めることが大切です。

Lesson 8Chapter 3
ビッグデータ

ビッグデータ は、従来のデータベース管理手法やツールでは扱いきれないほどの膨大なデータを指します。

例:

  • SNSへの投稿
  • オンラインショッピングの取引履歴
  • IoTデバイスから継続的に送信されるセンサーデータ

ビッグデータが注目される理由の1つは、そこに隠されたパターンや傾向、因果関係などを分析することで、新たな価値やビジネスインサイトを得られる可能性が高いからです。

Lesson 8Chapter 3.1
ビッグデータの特徴

ビッグデータの特徴は、以下の ビッグデータの3V と呼ばれる要素を備えていることです。

  • Volume(量)
    • 扱うデータのサイズが非常に大きいことを意味します。
    • 日々生成されるログデータやセンサーデータ、SNSの投稿など、膨大な情報が蓄積されていきます。
  • Velocity(速度)
    • データが生まれるスピードや、リアルタイム性が求められる点を示します。
    • ウェブサービスや決済システムで発生するトランザクションは、常に更新・追加されるため、高速な処理が必須となります。
  • Variety(多様性)
    • データの形式や構造が非常に多様であることを表します。
    • テキストデータ、画像、動画、音声、数値データなど、形態が異なる情報を共通の基盤で扱う必要があります。

Lesson 8Chapter 3.2
データの収集・分析技術

ビッグデータを取り扱うためには、データを効率的に収集・加工・分析する技術が不可欠です。

データ
収集
データ
ストレージ
データ
前処理/ETL
データ解析
(機械学習/BI)
インサイト
可視化・レポート

分散処理フレームワーク

  • Hadoop
    大量のデータを複数のサーバーに分散して格納・処理するフレームワークです。HDFS(Hadoop Distributed File System)と呼ばれる分散ファイルシステムを持ち、マップリデュースという手法で処理負荷を分散します。
  • Spark
    メモリを中心とした高速処理が可能な分散処理エンジンです。機械学習やストリーミングデータの処理など、多岐にわたる用途で使われます。

NoSQLデータベース

  • Key-Valueストア
    シンプルなキーと値の組み合わせでデータを保持し、スピード重視の設計になっています。大量アクセスやセッション管理などを得意とします。
  • ドキュメント型データベース
    JSON形式のような柔軟なデータ構造を扱います。スキーマレスなので、データ構造の変更にも柔軟に対応できます。
  • グラフデータベース
    ノードとエッジで構成されるデータを表現します。ソーシャルネットワークやレコメンド機能などの関係性分析で威力を発揮します。

ストリーム処理

データが次々に生成されるようなケースでは、蓄積を待たずにリアルタイムで分析を行なうストリーム処理が求められます。

たとえば、大量のセンサーデータが絶えず送られてくるIoTの現場では、異常値を即座に検知してアラートを出すような仕組みが必要です。

Apache KafkaやApache Flinkなどが代表的な技術として挙げられます。

データ分析・機械学習

  • 機械学習プラットフォーム
    大量のデータから予測モデルや分類モデルを構築するための環境が整備されています。クラウド上で学習用の高性能GPUを利用したり、スケーラブルな学習環境を構築したりできます。
  • データ可視化ツール
    膨大なデータをグラフやチャート、ダッシュボードなどで直感的に把握し、ビジネス部門とのコミュニケーションを促進します。

Lesson 8Chapter 3.3
活用事例

ビッグデータはさまざまな分野で活用されています。

マーケティングと顧客分析

ECサイトや実店舗などから得られた購買履歴やアクセスログを分析し、顧客の属性や行動パターンを抽出します。それに基づいてターゲティング広告やレコメンドを行ない、販売促進や顧客満足度の向上につなげます。

関連する用語もあわせて整理しておきましょう。

  • ロングテール
    ロングテール とは、ECサイトにおいて、ニッチな商品群も含めた幅広い品揃えを提供することで、少数ずつの売上を積み重ねて大きな収益源とする考え方です。
  • CGM
    CGM(Consumer Generated Media)は、SNSの投稿や口コミ、レビューなど、消費者自身が発信するコンテンツを指します。ロングテール商品への口コミ拡散や評価がビッグデータに蓄積され、マーケティングに生かされます。
  • エスクローサービス
    エスクローサービス は、オンライン取引における支払いと商品の受け渡しを安全に行なうための仲介サービスです。第三者(エスクロー事業者)が一時的に代金を預かることで、商品未着や代金未払いといったリスクを軽減し、安心してEC取引ができる仕組みを提供します。

産業IoTとスマートファクトリー

製造現場では、IoTセンサーが機械やロボットの状態をモニタリングし、大量の稼働データを収集します。それを分析することで、設備の予防保全や生産性向上が可能となります。

機械学習を活用して故障の兆候を早期に見つけたり、最適な生産スケジュールを組んだりと、効率化に大きく寄与します。

公共分野とスマートシティ

行政が公共の交通データやエネルギー消費データを分析して、渋滞緩和や省エネ施策などを検討する取り組みが進んでいます。都市計画やインフラ管理にビッグデータを取り入れることで、効率的な資源活用や環境負荷の軽減が期待されています。

ヘルスケアと医療

患者の診療データや検査結果、さらにはウェアラブルデバイスから得られる生体情報を活用し、予防医療や新薬開発に役立てています。特に大規模な臨床研究やゲノム解析では、クラウド上での超大規模データ解析が不可欠となっています。

金融とリスク管理

銀行や保険会社で行なわれるリスク管理や融資審査において、ビッグデータは欠かせない存在です。取引履歴や顧客データを統合的に分析することで、不正検知や信用スコアリングを高精度に実施します。

Lesson 8Chapter 4
IoT

IoT(Internet of Things) は、家電やセンサーなどの物理的な「モノ」がインターネットを通じて連携し、データをやりとりする仕組みを指します。

従来はパソコンやスマートフォンといった情報機器のみがネットワークに接続されていましたが、現代は幅広いデバイスがインターネットへつながるようになりました。たとえば、スマート家電は温度や電力使用量、稼働状況などをクラウドへ送信し、遠隔操作やデータ分析による最適制御が可能です。

こうした取り組みにより、生活の利便性や産業の効率化、社会インフラの最適化など、多方面で新たな価値が生まれています。

IoT機器の例

Lesson 8Chapter 4.1
IoTの構成

IoT では、「デバイス」「ネットワーク」「クラウドまたはサーバー側のシステム」の3つの要素が連携して動作します。

サーバ/クラウド
ネットワーク
デバイス(エッジ側)
データ蓄積
解析(AI)
可視化
Wi-Fi / LPWA /
携帯回線など
センサー
家電
ロボット

デバイス(エッジ側)

温度センサーや加速度センサー、GPSなどを搭載した装置です。工場内の機械や家庭のエアコン、車両など、あらゆる物理的なモノが該当します。これらのデバイスが周囲の状況を観測し、得られた情報をネットワークへ送信します。

IoTの要素として重要なのが「センサー」と「アクチュエーター」です。「センサーで状況を把握し、アクチュエーターで実行する」流れが、IoTの基本的な仕組みです。

  • センサー
    センサー は温度や湿度、加速度などのデータを取得する装置で、取得した情報をネットワーク越しにクラウドへ送信します。
  • アクチュエーター
    アクチュエーター は電気信号を物理的な動きに変換する装置で、モーターやバルブなどを制御して、自動化や遠隔操作を可能にします。
  • 組み込みシステム
    組み込みシステム(エンベデッドシステム)とは、家電製品や産業用機器、自動車などのハードウェア内部にあらかじめ実装されている専用のシステムやソフトウェアを指します。これらの組み込みソフトウェアがセンサーやアクチュエーターを制御し、IoTデバイスとしての機能を実現します。リアルタイム性や安全性が重視されるため、設計や開発プロセスは一般的なパソコン向けソフトウェアと異なる特徴を持ちます。

ネットワーク

デバイスから送信されるデータをサーバーへ届けるためのインターネットや無線通信のインフラです。

  • 一般的なWi-Fiや携帯回線だけでなく、工場内で使われる有線接続、LPWA(Low Power Wide Area)と呼ばれる省電力の長距離通信方式など、多様な選択肢があります。
  • デバイスの用途や設置場所に応じて通信方式を選定し、必要に応じてゲートウェイ装置でプロトコル変換を行ないながらデータを収集します。

クラウドまたはサーバー側のシステム

送られてきたデータを蓄積・分析する役割を担います。

  • 大量のデバイスからの通信に対応するには、スケーラブルなクラウド環境が有効です。需要に応じてコンピューティングリソースやストレージ容量を増減させ、コストとパフォーマンスを両立させられます。
  • 蓄積したデータに対し、機械学習や可視化ツールを使った分析を行ない、その結果をさらにデバイス制御に役立てます。

データ交換の手段

IoTで良く使われるデータ交換の手段についても確認しておきましょう。

  • RFID
    RFID(Radio Frequency Identification)は、電波を用いてタグ情報を読み書きする仕組みで、物流・倉庫管理や入退室管理など、多岐にわたる用途で利用されます。バーコードよりも遠距離・一括読み取りに優れており、IoTとの組み合わせによってリアルタイムで物品の追跡や在庫管理を行なうケースが増えています。
  • IDタグ
    IDタグ は、RFIDなどで用いられる情報媒体で、対象物に取り付けられたタグを読み取ることによって在庫や位置情報などを管理します。倉庫や店舗の在庫管理、イベント会場の入場管理などに活用され、IoT社会における「モノの識別」の重要な役割を担っています。
  • NFC
    NFC(Near Field Communication)は、スマートフォンや電子マネーカードなどで利用される近距離無線通信技術です。数cm程度のきわめて近い距離でのみ通信を行ない、タッチするだけで決済やデータ交換が可能になります。RFIDと同様にIoTデバイスと連携することで、店舗や交通機関、セキュリティ分野などで幅広く活用されています。
  • QRコード
    QRコード は、2次元コードの一種で、高速かつ大容量の情報を読み取りやすいのが特長です。スマートフォンのカメラを通じてURLや商品情報、クーポンなどを表示できるため、IoT機器と組み合わせる事例が増えています。店舗での決済やイベント入場、トレーサビリティにも使われています。
  • GPS
    GPS(Global Positioning System)は、人工衛星からの電波を受信してデバイスの位置情報を特定するシステムです。トラックや自動車に搭載したGPSから取得した位置データをクラウドで管理することにより、配送ルートの最適化や安全運転管理など、IoTを活用した高度な物流・交通サービスを実現しています。

Lesson 8Chapter 4.2
活用事例

IoTの実用例は多岐にわたります。代表的な分野をいくつか挙げます。

スマートホーム

家庭の家電やセキュリティ機器がネットワークにつながり、スマートフォンから照明やエアコンを遠隔操作できます。外出先でエアコンをONにして帰宅時に部屋を快適な温度に保ったり、防犯カメラやドアの施錠状態を確認したりすることが容易になります。

産業用IoT

工場の生産ラインに取り付けたセンサーが、設備の稼働状況や異常を常時監視し、不具合が起きる前にメンテナンスを促す「予知保全」が実現しています。故障によるダウンタイムを最小化し、生産効率を高める効果があります。

物流・交通

トラックや自動車、倉庫の在庫管理をリアルタイムで把握することで、配送ルートの最適化や輸送コストの削減、在庫の適正在庫化を図れます。GPSデバイスやRFIDタグなどが活用され、物流全体の可視化が進んでいます。

農業・畜産

センサーが土壌や環境データを取得し、作物の生育に合わせて水や肥料を自動制御します。農作業の効率化と収量・品質の向上を同時に実現できるため、人手不足の解消や安定的な生産に貢献します。

畜産分野では、牛や豚などの体調をモニタリングするスマート首輪を活用し、早期の体調変化を検出して病気拡大を防ぐ取り組みがあります。

医療・ヘルスケア

病院の医療機器や患者のウェアラブル端末から得られるデータを統合し、リモートでの健康管理や診療支援を行ないます。血圧や心拍数を遠隔地の医師と共有し、定期的に経過を観察できる仕組みが広まりつつあります。

Lesson 8Chapter 5
5Gと通信技術の進化

5G は、従来の4G(LTE)よりも大幅に高速化された通信速度と、超低遅延、多数同時接続が特長のモバイル通信ネットワークです。

5Gにより、映像やデータを瞬時にやり取りすることが可能となり、遠隔医療や自動運転、産業用ロボットの制御など、多彩な分野で新たなサービスが創出されています。また、5Gは通信方式そのものが柔軟であり、屋内エリア向けの「ローカル5G」として企業や自治体が独自に導入できる可能性も広がっています。

NTT Docomo - 5G(第5世代移動通信システム)

Lesson 8Chapter 5.1
特徴

5Gが注目される理由は、通信速度の大幅な向上と合わせて、「超低遅延」と「多数同時接続」を実現できる点にあります。

5G
高速大容量
通信
超低遅延
多数同時
接続
映像/VR
クラウドゲーム
遠隔操作
自動運転
IoTデバイス
多数接続

高速大容量通信

理論上の最大通信速度は、4Gのおよそ数十倍にも達するとされています。大容量の動画データやVR/ARコンテンツのストリーミング、クラウドゲームなど、これまでネットワーク帯域の制約がボトルネックだったサービスを拡大しやすくなります。

映像系の活用だけでなく、ファイルのアップロードやダウンロードが一瞬で終わるようになるため、働き方や学習スタイルも大きく変わり得ます。

超低遅延

遅延(Latency) とは、データを送信してから応答が返ってくるまでの時間です。通信遅延が低いほど、オンライン上の操作がリアルタイムに近づきます。5Gでは数ミリ秒以下の遅延も可能とされており、たとえば以下のような場面で効果を発揮します。

  • 遠隔手術:手術用ロボットを遠隔制御する場合、わずかな遅延でもミスが許されません。5Gの超低遅延は、医師が実際に隣でオペレーションしているかのような操作感覚をめざします。
  • 自動運転:車同士の通信や道路インフラとの情報交換をリアルタイムに行なうことで、高度な安全運転支援が実現します。

多数同時接続

一度に大量のデバイスをネットワークに接続しても、遅延や通信障害が起きにくい設計になっています。IoT時代においては、産業機器や家電、ウェアラブル端末などがネットワークにつながるケースが増えています。5Gの同時接続性は、こうした機器の管理やデータ活用を支えます。

Lesson 8Chapter 5.2
産業の変革

5Gの特長は、産業界へ大きなインパクトを与えます。高速大容量と超低遅延、多数同時接続が組み合わさることで、新たなビジネスモデルや価値創造のチャンスが生まれています。

スマートファクトリー

製造業での稼働状況や品質管理において、センサーやロボットが取得した膨大なデータをリアルタイムにやりとりし、中央サーバーやエッジコンピュータが高度な分析・制御を行なう構造が一般化しつつあります。

自動運転とモビリティサービス

車両同士や交通インフラとの情報交換を低遅延で行ない、事故のリスク低減や交通渋滞の解消をめざす取り組みが進んでいます。5Gの高信頼性通信を使えば、自動車の位置や走行速度をミリ秒単位で共有し、複数台の車両が連携して安全に走行できるようになります。

エンターテイメントとメディア

高解像度の映像やVR/ARコンテンツをリアルタイムに配信するため、5Gの高速通信は最適といえます。スタジアムやライブ会場で、観客が複数の視点から選択して映像を視聴するサービスなどが検討されています。

Lesson 8Chapter 6
クラウドとエッジコンピューティング

クラウド は、インターネットを通じてストレージやコンピューターなどの「ITリソース」をレンタルするサービスです。レッスン7で学びました。

エッジコンピューティング は、エッジデバイスやエッジサーバーの近辺でデータ処理を行ない、必要最低限のデータのみをクラウドに送る仕組みです。クラウドと対照的なアプローチとして注目されています。

Lesson 8Chapter 6.1
クラウドとエッジコンピューティングの違い

クラウドコンピューティングとエッジコンピューティングは、ともにコンピュータ資源を活用する技術ですが、処理や保管を行なう場所が異なる、という違いがあります。

クラウドコンピューティング

  • 集中型のリソース管理
    巨大なデータセンターにサーバー群を集約し、そこでデータ保管やアプリケーション動作を行ないます。ユーザーはインターネットを通してこれらのサービスを利用します。
  • 拡張性とコスト効率
    需要に合わせて容易にサーバーを追加したり、不要になったリソースを解放することができます。大規模な企業システムから個人の小規模プロジェクトまで幅広く対応します。
  • 運用管理のアウトソーシング
    サーバーのハードウェア管理や更新をクラウド事業者が担うため、利用者はシステム運用の手間を大幅に軽減できます。

エッジコンピューティング

  • 分散型のデータ処理
    ユーザーの近く(末端デバイスやローカル拠点など)でデータ処理を行ない、遅延を最小化します。たとえば工場内の制御装置が、リアルタイムでセンサー情報を処理し、必要があれば結果だけをクラウドに送信します。
  • ネットワーク負荷の軽減
    大容量のデータをすべてクラウドに送るのではなく、端末側であらかじめ加工・集約した情報だけをアップロードします。そのため、通信コストの削減が期待できます。
  • 堅牢性と可用性
    通信が一時的に不安定になっても、エッジ側で必要な処理を完結できるため、システム全体の可用性が向上します。遠隔地の設備やネットワーク障害が起きやすい環境で威力を発揮します。

どちらを選ぶか

現実的には、クラウドとエッジの両方を組み合わせたハイブリッド構成 が増えています。

たとえば、製造業で設備の予兆保全を行なう場合、現場のエッジサーバーが瞬時に異常パターンを検出し、重要情報だけをクラウドに蓄積してAI解析を行なう流れです。

クラウド
インターネット
現場(エッジ)
大規模
データ分析
(AI/ML)
長期保管/可視化
BIツール
ネットワーク
センサー/ロボット
即時制御
エッジサーバ
(近接設置)

これにより、低遅延で最適な性能やコスト、信頼性を実現できます。

Lesson 8Chapter 6.2
活用事例

クラウドとエッジコンピューティングの組み合わせは、以下のような事例で活用されています。

スマートシティと交通管理

  • 都市の交通量や公共インフラの利用状況をセンサーで集約し、エッジコンピューティングでリアルタイムに解析します。
  • 信号の制御や駐車場の空き状況の通知などは、遅延が少ないほど効果的です。大規模データを市全体のクラウド基盤へ蓄積し、長期的な渋滞対策や環境改善策を検討するための材料にもなります。

工場の自動化(スマートファクトリー)

  • 製造ラインのロボットや機械から大量のデータが連続的に生成されます。エッジサーバーが作業現場付近でデータを解析し、不良品の即時検出や異常振動の早期警告を行なうことで、生産性を向上させられます。
  • 長期的なデータはクラウドに集積され、AIが故障の兆候を捉えて予知保全を実現したり、最適な生産スケジュールを算出したりします。低遅延で制御が可能なうえ、大規模分析も行ないやすい組み合わせが理想とされています。

サービスロボットとドローン

  • 自律移動するロボットやドローンには、多彩なセンサーが搭載されます。リアルタイムに周辺状況を把握しながらルートを決定するためには、継続的にデータを処理しなければなりません。
  • ロボット本体やその近くに置かれたエッジサーバーで主要なアルゴリズムを走らせることで、低遅延かつ安定した制御が可能になります。クラウド側では各ロボットからの運用データをまとめて分析し、全体的な効率向上や保守計画に役立てられます。

Lesson 8Chapter 7
ブロックチェーンと分散型技術

ブロックチェーン は、複数のコンピュータによって同じ台帳を管理し、不正なデータ改ざんを防ぐ仕組みを持つ分散型技術です。

従来のシステムでは、中央サーバーや特定の管理者がデータを集約し、利用者はそれを参照する形が一般的でした。

これに対してブロックチェーンでは、参加者全員が等しい権限を持ち、各ノードが取引情報を検証・承認します。多くのノードで検証が行なわれるため、1つのノードが不正を働いても、全体としての整合性を維持しやすい構造が特徴です。

総務省:情報通信白書 - ブロックチェーン

Lesson 8Chapter 7.1
ブロックチェーンの構成

ブロックチェーンは、大きく分けて以下の要素から構成されます。

  • 分散型台帳
    ネットワーク上に参加するノード(コンピュータ)が共有し合う形の台帳です。取引データ(トランザクション)が検証・承認された後、チェーン状につながった「ブロック」に書き込まれます。各ノードが同じ履歴を保持し、不整合が起きないように相互に検証を行ないます。
  • ブロックとハッシュ
    ブロックには、一定数の取引データがまとめられています。各ブロックには「ハッシュ値」が付与され、前のブロックのハッシュ値も含まれています。これによりブロック同士が連続的につながり、一部を改ざんすると後続のブロックも連鎖的に不整合が生じる仕組みになっています。
  • コンセンサスアルゴリズム
    ネットワーク全体で取引の正当性を合意する仕組みです。代表的な手法には以下のようなものがあります。
    • PoW(Proof of Work):CPUパワーや電力を消費して計算問題を解くことで、ブロック承認の権利を得る方式です。
    • PoS(Proof of Stake):保有しているトークン(コイン)の量に応じて承認の確率を決定する方式です。
    • PoA(Proof of Authority):限られた承認者がブロックを検証する仕組みで、企業や団体内でのプライベートブロックチェーンによく使われます。
  • 非中央集権性
    • 多数のノードが同じデータを保持し、取引を検証することで1か所だけの改ざんや障害に強い耐性を持ちます。システムが停止しにくい反面、承認に時間がかかったり、アルゴリズムによっては大量の電力を消費したりする課題が指摘されています。

ブロックチェーンの主なメリット

ブロックチェーンの主なメリットは以下です。

  • 改ざん耐性:全ノードが同じ台帳を保持し、ハッシュ値を連鎖的に記録しているため、不正なデータ変更が難しくなります。
  • 障害への強さ:一部のノードがダウンしても、他のノードでデータを保持しているためシステムが継続稼働しやすいです。
  • 透明性:参加者がネットワーク上の取引履歴を追跡できるため、信頼性や透明性を担保しやすくなります。

Lesson 8Chapter 7.2
仮想通貨以外でのブロックチェーンの応用

ブロックチェーンは、「ビットコイン」をはじめとする暗号資産(仮想通貨)の他にも、さまざまな用途で活用が検討されています。

サプライチェーン管理

製品が原材料の調達から最終消費者の手に渡るまでの過程を、ブロックチェーン上で追跡する取り組みがあります。誰がいつどこで何を扱ったのかが記録され、改ざんが難しいため、信頼性の高いトレーサビリティを確立できます。

著作権保護とコンテンツ流通

音楽やイラスト、写真、動画などのデジタルコンテンツの所有権をブロックチェーンで管理し、収益分配を自動化する試みが進んでいます。コンテンツが複製・改変されても、正当な権利者が誰なのかを明確化できます。

NFT(Non-Fungible Token) という、唯一無二のデジタル資産を示すトークンの仕組みにより、アート作品や収集品をデジタル空間で売買する市場は、一時大きなブームになりました。

投票システム

オンライン投票や電子投票にブロックチェーンを応用することで、改ざんや二重投票を防止し、公平で透明性の高い選挙を実現する可能性が期待されています。

ただし、投票の秘密保持やネットワーク障害時の対応など課題が多く、実証実験段階のケースが多いです。

Lesson 8Chapter 7.3
スマートコントラクトの仕組みと応用

スマートコントラクト は、ブロックチェーン上で自動実行される契約プログラムを指します。取引や約束事などの条件をプログラムとして実装し、それが満たされたときに自動的に処理が行なわれる仕組みです。スマートコントラクトも、さまざまな用途で活用が検討されています。

  • 保険金の自動支払い
    災害保険や航空遅延保険など、一定の条件(災害発生の公式情報やフライト状況のデータ)を検証して自動的に保険金を支払う仕組みが考えられます。保険会社と契約者の間で手続きの迅速化が期待できます。
  • サプライチェーンの自動決済
    商品の納品完了が検証できた時点で支払いを自動実行することで、取引先同士の信頼性を高めたり、現金化サイクルを短縮したりできます。
  • チケット転売防止・デジタルアセット管理
    ライブコンサートのチケットをNFTとして発行し、転売回数や所有者の移転履歴をすべてブロックチェーンに記録する取り組みがあります。

Lesson 8Chapter 8
量子コンピューティング

量子コンピューティング は、従来のコンピュータとはまったく異なる原理で高速な計算を可能にする技術です。

最適化問題や暗号解析、新薬開発など、従来のスパコンでも時間がかかる課題を高速に処理できる可能性が期待されています。

Lesson 8Chapter 8.1
主なキーワード

量子コンピュータを理解するうえで押さえておきたいキーワードは以下です。

  • 量子ビット(キュービット)
    従来のコンピュータが「ビット」として0または1のいずれかの状態だけを扱うのに対し、量子ビットは0と1の両方が同時に存在するような「重ね合わせ」状態を取ることができます。
  • 重ね合わせ(スーパー ポジション)
    量子ビットが複数の状態を同時に保持できる性質です。観測(測定)した瞬間に「0」か「1」どちらかが確定します。
  • 量子もつれ(エンタングルメント)
    複数の量子ビットが互いに密接に関連し、1つの量子ビットの測定結果がもう1つへ即座に影響を与える現象です。
  • 量子アルゴリズム
    量子ビットと従来型のロジックゲートは仕組みが違うため、特有のアルゴリズムが研究されています。

Lesson 8Chapter 8.2
活用領域

2024年12月、Googleは新しい量子コンピュータ「Willow(ウィロー)」を発表しました。従来のスーパーコンピュータでは10の25乗年かかる計算が5分未満で実行できたとして、大きな話題になっています。

量子コンピュータは、以下のような領域で特に有効だと考えられています。

  • 暗号解析・セキュリティ
    量子アルゴリズムが本格的に実用化されると、従来の公開鍵暗号を破られるリスクが高まるとされています。ShorのアルゴリズムでRSA暗号が効率的に解読される可能性があり、ポスト量子暗号の研究が加速しています。
  • 最適化問題
    物流やサプライチェーン、金融取引など、多数の組み合わせを考慮して最適な解を導く問題は従来のコンピュータでは計算負荷が膨大になります。
    量子コンピュータは、組み合わせ爆発を起こしがちな問題に対して大きな計算能力を発揮する可能性があり、実証実験が進んでいます。ただし、現状では量子ビット数の制限やエラー率の問題で大規模な実用例はまだ限られています。
  • 新素材・新薬の開発
    分子構造のシミュレーションや化学反応の予測には、膨大な演算が必要です。量子コンピュータは量子現象を直接シミュレートするため、従来のコンピュータより正確かつ高速に分子レベルの解析をできる可能性があります。
  • 金融工学やリスク管理
    株価や為替、商品取引の市場変動をシミュレートし、リスクヘッジを行なうようなタスクでも、量子コンピュータの高速演算が応用できると考えられます。多くの市場要因を同時に考慮できるため、複雑なポートフォリオ分析やモンテカルロシミュレーションの高速化が研究テーマになっています。

Lesson 8Chapter 9
マルチメディアとAR、VR

マルチメディア とは、文字や画像、音声、動画など、複数のメディア要素を組み合わせた情報表現や、それを取り扱う技術全般を指します。

マルチメディアの拡張として注目されているのが「AR」と「VR」です。

AR(Augmented Reality)は、実際の空間にデジタル情報を重ね合わせる技術で、地図アプリのルート案内や、スマートフォンのカメラ越しにキャラクターを表示するシステムなどが好例です。

VR(Virtual Reality)は、専用ゴーグルなどを使って、あたかも仮想空間の中に入り込んだような体験を可能にします。ゲームや観光、医療分野のシミュレーションなど、多岐にわたる活用が進んでいます。

AR/VRの例:Apple Vision Pro

Lesson 8Chapter 9.1
マルチメディア技術

ここでは、マルチメディア関連の技術を個別に整理します。

マルチメディア

マルチメディア は、文字・画像・音声・動画といった多様な情報を組み合わせることで、人間の五感により多くの刺激を与え、わかりやすく情報を伝える手法です。インターネットやコンピュータの世界だけでなく、広告やデジタルサイネージでもマルチメディア要素が取り入れられています。

  • 例として、ウェブページにテキストと動画を埋め込み、さらに音声解説を追加することで、ユーザーが視覚と聴覚を使って内容を理解できます。
  • 学習教材やオンライン講座では、マルチメディアを使うことで学習効果が高まるとの研究もあり、多くの教育機関が取り入れています。

音声処理

音声処理では、音をデジタル化して認識・合成する技術が活用されます。主な要素には次のようなものがあります。

  • サンプリング:アナログの音を一定時間ごとに区切り、数値データとして取り込む工程です。
  • 量子化:サンプリングした波形を数値化する際、どの程度細かく刻むかを決めるのが量子化ビット数です。ビット数が大きいほど高音質になりますが、データ量が増えます。
  • 音声認識:マイクから取り込んだ音声をテキストに変換する技術です。ディープラーニングをはじめとしたアルゴリズムの進歩により、自然言語処理との連携が進んでいます。
  • 音声合成:コンピュータが文字データを元に人工的な音声を生成します。ナレーション作りや音声アシスタントなど、多くの分野で応用が進んでいます。

静止画処理

静止画とは、いわゆる画像データのことを指します。静止画には以下の代表的な形式があります。

  • ビットマップ方式:ピクセル(ドット)の集まりで構成される画像形式です。JPEGやPNGなどが広く使われています。
  • ベクター方式:線や図形の座標情報として画像を保持する形式です。ロゴやイラストなど、拡大縮小しても劣化しない特長があります。
  • 解像度とカラーモデル:画像は縦×横の解像度、色深度(RGB各色のビット数)などを総合して画質を決定します。

画像処理技術には、以下のようなものがあります。

  • フィルター処理:ノイズ除去やシャープ化、ぼかしなど、画質を調整したりエフェクトを加えたりするための機能です。
  • 画像解析:物体認識や特徴抽出など、AIを使った解析が注目されています。顔検出やOCR(文字認識)など実務的にも利用が進んでいます。

動画処理

動画は静止画の連続で成り立ち、音声を含むことも多いメディアです。1秒あたりのフレーム数(フレームレート)や解像度、ビットレートが画質やデータ量に大きく影響します。

  • コーデック:動画を圧縮・伸長する方式で、H.264やH.265(HEVC)などが代表例です。圧縮率や処理負荷、画質が異なります。
  • 動画編集:カットつなぎやエフェクト追加、テロップ挿入などを行なう際には、専用の動画編集ソフトウェアが用いられます。
  • ライブ配信:リアルタイムで映像をネット経由で送る形態です。エンコード技術やCDN(Content Delivery Network)が高速配信を支えています。

情報の圧縮と伸長

マルチメディアデータは膨大なサイズになるため、効率的な圧縮技術が欠かせません。

  • 可逆圧縮:解凍時に元のデータを完全に復元できる方式です。PNGや無圧縮音声フォーマット(WAVなど)は可逆圧縮もしくは非圧縮を基本とします。
  • 非可逆圧縮:解凍しても元のデータと完全には一致しませんが、視覚・聴覚で差を感じにくい部分を削ることで圧縮効率を上げます。JPEGやMP3、H.264など、多くのマルチメディア形式は非可逆圧縮が採用されています。
  • ストリーミング:データを小さな塊に分割して送受信し、受け取った側で逐次再生する形式です。動画サービスや音楽配信で一般的になっています。

グラフィックス処理

グラフィックス処理 は、コンピュータ上で映像を描画・表示する仕組みです。

  • レンダリング:3Dモデルやテクスチャ、照明情報を元に、2Dの映像を生成する工程です。フォトリアルな描画を行なうには、膨大な計算を高速に処理するGPUが必要です。
  • シェーダー:3Dモデルの表面材質や光の反射具合をプログラムで制御する仕組みです。金属の質感やガラスの透明度など、リアルな表現を可能にします。
  • リアルタイム描画とプリレンダリング:ゲームなど、ユーザーの操作が必要な場合はリアルタイム描画が行なわれます。一方で、アニメ映画などはプリレンダリングで高品質映像をあらかじめ生成しておきます。

Lesson 8Chapter 9.2
マルチメディア技術の応用例

マルチメディアの応用例は多岐にわたります。以下に代表的なものを示します。

  • 教育・研修
    動画や音声、インタラクティブコンテンツを用いたオンライン学習プラットフォームが普及しています。学習成果をビジュアルにフィードバックする仕組みや、シミュレーション演習を組み合わせた研修プログラムは、受講者の理解を深めます。
  • 広告・マーケティング
    インターネット広告やデジタルサイネージで、動画やアニメーションが活用され、視聴者の目を引きやすくなります。
  • 医療やリハビリ
    医療現場では、CTやMRI画像などの診断画像を3D化し、手術計画に活かすシステムが登場しています。
  • 芸術・エンターテイメント
    アート分野では、プロジェクションマッピングやインタラクティブ展示が話題です。観客の動きに合わせて映像や音声が変化し、臨場感のある演出を可能にします。

Lesson 8Chapter 9.3
ARとVR

AR(Augmented Reality)

AR(拡張現実) は、現実世界にバーチャル情報を重ねあわせて表示する技術です。カメラやセンサーを使い、ユーザーが見ている空間にテキストや3Dオブジェクトなどを合成することで、新しい体験を生み出します。

  • マーカー方式とマーカーレス方式
    マーカー方式では、あらかじめ設定された目印(マーカー)をカメラで認識し、その位置に仮想オブジェクトを配置します。一方で、画像認識や空間認識を高度化し、マーカーなしで周囲のシーンに重ね合わせるマーカーレス方式も一般化しています。
  • ユースケース
    • ナビゲーション:スマートフォンの画面に実際の風景と矢印や案内表示を重ねることで、直感的にルートを把握できます。
    • 商品展示・試着:家具や家電を自分の部屋に配置した様子を疑似的に表示したり、服やメイクをバーチャル試着できるアプリがあります。

VR(Virtual Reality)

VR(仮想現実) は、ユーザーがヘッドマウントディスプレイ(HMD)などの専用デバイスを装着し、コンピュータで生成された仮想空間の中に没入できる技術です。

  • 視覚と聴覚の没入
    HMDのディスプレイとステレオ音声により、見えている世界が仮想空間に切り替わります。頭の向きに合わせて視点が変わるため、あたかも仮想空間を自由に見回している感覚を得られます。
  • 操作インターフェース
    コントローラーや手の動きをトラッキングするセンサーを用いることで、仮想空間内のオブジェクトをつかんだり移動させたりできます。高性能なVRセットでは、指先の動きまで細かく検出できるものもあります。
  • 応用例
    • ゲーム・エンターテイメント:臨場感のあるゲーム体験やバーチャルライブなどが人気です。
    • 研修・シミュレーション:工場の作業手順や飛行訓練、医療手術の練習など、多様な訓練場面でVRが導入されています。
    • リハビリ・セラピー:仮想空間での活動を通じて身体機能の回復をサポートしたり、精神面のリラクゼーションを促す研究も進んでいます。

Lesson 8Chapter 10
まとめ

このレッスンでは、AI、ビッグデータ、IoT、5G、クラウドとエッジコンピューティング、ブロックチェーン、量子コンピューティング、そしてマルチメディアやAR/VRに至るまで、多岐にわたるテクノロジーを総合的に学びました。

各技術の基本的な仕組みや活用事例、現時点での課題を整理することで、ビジネスや社会での具体的な活用イメージを得られるようになります。これらのテクノロジーの連携によって、業務効率化や新サービスの創出、競争力の強化など、多くの可能性が開かれるでしょう。

このレッスンで学んだこと

このレッスンで学んだことを振り返り、理解度を確認しましょう。

  • AI(人工知能)は、人間の知的活動を模倣するコンピューター技術の総称。ロボット制御や画像認識、言語処理など幅広い領域で活用される。
  • 機械学習は、データからパターンを学習し、予測や判断を行なう。スパムメールの分類や需要予測、自動運転などに利用される。
  • ディープラーニングは多層のニューラルネットワークを用いる機械学習の一分野。画像や音声、言語処理の精度を大幅に向上させ、多くのAIサービスの基盤になっている。
  • 生成AI(Generative AI)は、新しい文章や画像を生成するAIモデル。ChatGPTなどの言語モデルは自己教師学習を用い、文章の生成や要約、翻訳などを行なう。
  • ビッグデータは、従来の手法では扱いきれないほど大規模かつ多様、そして生成速度も速いデータを指す。
  • ビッグデータの活用事例として、ECサイトの購買履歴分析や、製造業の稼働データ解析、スマートシティの交通管理などが挙げられる。
  • IoT(Internet of Things)は、センサーや家電などの「モノ」がインターネットに接続し、データをやり取りする仕組み。スマートホームや工場の予知保全など応用範囲が広い。
  • 5Gは大容量・超高速通信、超低遅延、多数同時接続が特徴。遠隔医療、自動運転、スマートファクトリーなど多様な分野で新しいサービスを可能にする。
  • クラウドコンピューティングは、集中型の巨大データセンターを活用し、必要に応じたスケーラブルなリソースをインターネット経由で利用する仕組み。
  • エッジコンピューティングは、デバイスの近くでリアルタイム処理を行ない、必要最低限のデータだけをクラウドに送信する。低遅延化や通信コストの削減に効果的。
  • ブロックチェーンは、分散型台帳技術を用いてデータを改ざんしにくくし、多数のノードで取引を検証・承認する仕組み。
  • スマートコントラクトにより、ブロックチェーン上で条件が整うと自動的に取引や契約が実行される仕組みを構築できる。
  • 量子コンピューティングは、量子ビットの重ね合わせやもつれを利用し、従来のコンピュータが苦手とする大規模計算を高速化する可能性を秘めている。
  • マルチメディアは、文字・画像・音声・動画など複数のメディアを組み合わせた情報表現。オンライン学習や広告、エンターテイメント分野で広く利用される。
  • AR(拡張現実)は、現実世界にデジタル情報を重ね合わせる。地図アプリのルート案内やバーチャル試着など実用例が増えている。
  • VR(仮想現実)は、ヘッドマウントディスプレイを通じて仮想空間に没入する技術。ゲームやシミュレーション、研修など多方面で導入が進む。

課題AIを使ってみよう

ChatGPTなどの生成AIを使ってみましょう。無料で利用できる主なサービスを例示します。

言語モデルと2回以上チャット(対話のやりとり)を続けてください。提出する画面キャプチャーは以下です。

  • 1回目のプロンプトと出力が見える画面キャプチャー
  • 2回目のプロンプトと出力が見える画面キャプチャー
  • (あれば)3回目以降のプロンプトと出力が見える画面キャプチャー

※機密情報や個人情報は入力しないよう、ご注意ください

課題の提出

以下の内容で課題を提出してください。

  • GyazoのURLに画面キャプチャーのURLを記載(貼り付け)てください
  • コメントには以下を記載してください
    • 入力したプロンプト(テキストで貼り付け)

課題の提出後、メンターは、ご提出いただいた内容をレビューします。